笑顔の森 〜ポジティブへの扉〜

みんなの笑顔、共感、学びを求めて。

謎の学生 〜その1〜

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私が大学院生の頃。ありがたいことに特待生として受け入れてもらい、修士課程の期間は前期、後期と教授のアシスタント(TA :ティーチングアシスタント)として同大学生のメールの返信、セミナーでの指導、エッセーやテストの採点などを任されていた。

 

後期に任された業務の一つが、言語のセミナーの指導諸々だった。私は日本の教育で散々馬鹿にされ、けなされてきた。だから、私の受け持った学生にはそんな思いをして欲しくなかった。

 

私のセミナーで大切なことは、みんながこのセミナーにいて居心地がいいと思えること。でも何よりも語学の楽しさを知ってほしかった。だから、質問があればどんどんしていいし、メールもいつでもして来ていい。決められた時間内ならオフィスに遊びに来てもいいと何度も何度も学生に伝えてあった。

 

その甲斐あって、回を重ねるごとに、学生が笑顔でプリントの問題を解いたり、手を挙げて質問をし始めた。サボる子もほとんどいなかった。

 

 

ある日のこと。一人の女の子(仮名:エミリ)が手を挙げて質問した。他の学生の質問は問題なく聞き取れたのだが、その子の言っていることは異常に速すぎて聞き取れない。2度ほど聞き返したが、あまり聞いても可哀想なので、後で質問するように頼んだ。

 

分からない単語を聞きたい学生やみんなの前では恥ずかしくて質問できない学生のためにもプリントを渡して指示をした後、私は教室を回るようにしていた。みんなプリントの問題に取り組み始めていた…その時、エミリが言った。

 

「何をすればいいの?」

 

他の学生には通じたけど彼女には分かりづらかったのかな。

 

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彼女の言っていることも分からないことが多いし、説明聞いてないし、ちょっと扱いづらい子なのかなと思い始めていた。

 

ある日、エミリが私のオフィスに現れた。私は快く受け入れて、椅子に座ってもらった。荷物を下ろして少し気まずそうにこっちを見て彼女が話し始めた。

 

「知っておいて欲しいことがあるんだけど…。」

 

深刻そうだった。私はOKと言って頷いた。

 

私、自閉症なんだ。授業中説明されても気が散って集中できない時もあるし、何をするのか分かっていてもみんなより時間がかかることがあるんだ。

 

私は、彼女が自閉症と聞いた瞬間、そういうことか、と思った。幸い、自閉症の子供と接したことや本を読んだことがあり少しは分かっていたつもりだった。かける言葉に迷ったが、聞いてみた。

 

自閉症って分かった時、どんな気持ちだった?

 

正直こんなこと聞くべきではないと思ったが、もっと自閉症のことを知りたいという気持ちと彼女の特徴や考え方を知るにはいいと思った。すると迷うことなく言った。

 

15歳の時に発覚したんだけど、分かった時は結構ショックだった。それまで理解できないことが多くて何故だか分からず悩んでた。だから知った時は辛かったけど、同時にい今までの自分の言動を理解できたからよかった。

 

と話してくれた。私は彼女と話している時、すごく貴重な体験をしていると感じた。エミリがどれだけの人に自閉症のことを話したは分からない。でも、心を開いて話してくれたことは本当に嬉しかった。そういった気持ちも込めて話してくれてありがとう、と伝えた。

 

それからというもの、セミナー中は前よりもエミリに注意を払うようにしたり、できなかったプリントは私のオフィスで終わらせてもらうようにした。彼女は気軽にオフィスに立ち寄るようになった。

 

数週間後、みんなが苦手なプレゼンがやってくる。ただでさえ緊張するのに、それを他言語で話さないといけない。自閉症のエミリはどう立ち向かうのか…。

 

                 

                  続く

 

ちょっと長くなるので続きはまた明日。また遊びに来てね♪

 

 

今日もみんなが笑顔でいられますように♡

最後まで読んでくれてありがとう╰(*´︶`*)╯♡