そう、数週間後、みんなの苦手なプレゼンがやってくる。得意な人もいるが、学生の多くは嫌う。それを他言語でみんなの前でやらなければならない。
このプレゼンは仲のいい子たちとできる、グループでするプレゼンだ。私はエミリが一人になってしまわないか心配していた。
私の受け持ったクラスは4〜5人ずつの4つのグループに分かれてすることになった。内容はレストランでの注文など、自分たちで考えたシンプルな設定でお芝居するというもの。単語やフレーズを書いたメモは見てもいいが、文を読んではいけないというルール。
幸いエミリはとても優秀で優しい子が集まったグループに決まった。
エミリがいつも通り私のオフィスでプリントの問題を解いていた時、来年も私が彼女を教えることができるか聞いて来た。
私の修士課程は1年だったからできないと伝えると、彼女は苦笑いし残念がった。エミリが卒業するまで見守ることはできなかったが、そう聞いてくれたことが嬉しかった。何度かオフィスで話すうちに信頼関係を築けてたのかな。
ある日、エミリと話していた時、将来何をしたいのか聞いたことがあった。すると彼女は、
学習障害者をサポートする仕事がしたい。
と、笑顔で誇らしげに言った。どんな答えが返ってくるのか予想もしていなかったが、彼女の夢があまりにも純粋で尊くて目頭が熱くなった。きっと彼女なら学生の気持ちを理解でき、いいアドバイスができるだろうと思った。
刻一刻とプレゼンの日が近づいていた。エミリは予想通り、プレゼンすることをかなり不安がっていた。私も彼女のグループのプレゼンが問題なく終わるかどうか心配していた。
………
とうとうその日がやってきた。順番に、グループがプレゼンをしていく。みんな思ったよりきちんと考え、楽しそうにやっている。
そしていよいよエミリのグループの出番だ。みんな立ち上がり、恥ずかしそうに笑って準備をするが、エミリだけは真顔だった。
そのグループのプレゼンが始まった。ナレーターの子はメモを片手に、かなり緊張している。そして、エミリが話し始める。なんと、彼女はメモも何も持たず、自分のセリフを全て記憶してプレゼンをし切ったのだ。
プレゼンが終わると、彼女のグループ全員が彼女を絶賛していた。きっとこんなに一度に褒められたことはなかったのだろう。エミリは少し照れ臭そうにしていた。
その後、彼女が教室をしばらく出ていてもいいかと聞いたので、許可した。廊下を行ったり来たりしている。きっとプレゼンがかなりのプレッシャーとなり、辛かったのだろう。
それでも彼女はクラスのプレゼンでトップの成績を取ったのだ。これからも辛い思いをすることが多々あるだろう。でも、このプレゼンのように一歩一歩乗り越えていってほしい。
彼女の努力ももちろん大切だが、エミリは周りの環境に恵まれていた。彼女が自分のグループに自閉症であることを伝えたかどうかは知らないが、文句を言う人は一人もおらず、彼女を助けることを惜しまず優しく接していた。
たったの数ヶ月間だったが、こんな素敵な学生たちと共に過ごせたこと、エミリと出会い、彼女の成長を見られことに本当に感謝している。この出来事は私の一生の宝物となった。
今日もみんなが幸せに過ごせますように💕
最後まで読んでくれてありがとう╰(*´︶`*)╯♡